2019年もまあまあ旅行には出掛けていた。
宇部への旅行は、私の趣味や興味ではなく、先輩の運転手としてだ。
先輩は体質の問題で運転免許がない。
同期の人や私のような後輩が暇を見ては彼の運転手を務めている。
先輩はいわゆる写真家で日本中の寂れた駅舎を撮影している。
写真家と言ってもみんなが知っているような有名な人ではない。
自称写真家、ということにもなりそうだが、著作を数冊出しているので、写真家と呼んでも差し支えないと思う。
もちろん、自費出版ではないが、写真で生活ができているわけでもない。
他に仕事を持っている先輩の撮影は週末を挟んだものになる。
待ち合わせは羽田空港か東京駅だ。
関東近県の地方都市に住んでいる先輩は「始発」に乗ってやってくる。
東京駅だと新幹線で来ることが多いので早くても8時台の集合となる。
空港の場合は、リムジンバスでやってくる。
このリムジンバスというやつは、飛行機のダイヤに合わせて運行されていることが多い。
飛行機の始発便に合わせて、6時台に羽田に到着する便も存在するのだ。
その始発リムジンバスで4時台に地元を出発するなら羽田か目的地で前泊すれば良いと思うのだが、写真以外の交友が少ない先輩は夜の付き合いもなく、晩酌もないので早朝は特に気にならないようだ。
なので、先輩との待ち合わせは金曜か土曜の朝6時台に羽田のターミナルで、ということになる。
私は羽田まで1時間もかからないアクセスを確保しているのだが、6時台に羽田へ行くのはなかなかの苦行だ。
一応は上下関係が存在するので私の方が先輩よりも先に空港に入っている。
そこで、気を揉むのは首都高の渋滞だ。
このリムジンバスは時間通りについた試しがない。
定刻よりも早いか遅いかだ。
早い分にはさほど気にならない(出迎えのためそれ以上に早めに行っている)のだが、遅い時は割とギリギリで到着になる。
バスが遅くついた場合、
腹減った、何か食べたい、というのをなだめてまずは制限区域内に放り込むのが、出迎えの次に私が行うタスクになる。
今回は少し遅れて到着だったが、宇部行きの便には間に合う時間だった。
再会を喜んだのも束の間、彼は
「青椒くん、ラウンジ行きたい」と言った。
(つづく、、、)