ルームチェンンジの交渉を終えた我々は、早速、ロンドンの街に繰り出すことにした。
まずはどこか博物館か美術館へ行こうということになった。
同行のたぬさんはあまり美術には詳しくない。
以前、清里にあった現代美術館で作品を観ていた時に、
たぬ「前来た時にあったチョコレート踏んづけた作品がなくなっていたぬ」
と言ったので、
私「運営(資金)のために売却したのだろう」
と言ったら、
たぬ「え?あれ売れるの?」
というので、
私「物によっては人類の宝だよ。来るたびに作品が減って寂しいね」
と言ったところ、なにを思ったのか、
たぬ「え?虫食いで捨てたんじゃないの?じゃあ、私がチョコレート踏んづけて額に入れたら儲かるかな?」
と言うので、
私「21世紀になってもう何年も経つのにその辺の野たぬきが、そんなもの作っても誰も買わないよ」
と説明したが、作品が持つ価値について理解は得られなかった。
そんなことをつらつらと時差ぼけが残るアタマで思い出していた。
そうすると、テートやサーチは厳しいな、と感じた。
即物的なたぬきには自然史博物館か大英博物館、ビクトリア&アルバート博物館が良いだろう、そんなことを考えていた。
まずは、グロースターロード駅からテクテク歩いて、クロムウェルロードへ出た。
自然史博物館かビクトリア&アルバート博物館とは反対方向に50メートルほど歩いて、前回泊まったイビスをたぬさんに案内した。
たぬさんは特に感慨もなさそうで、私が踵を返して、自然史博物館の方へ向かって歩き始めたところ、ついででもないのにわざわざ寄らなくてもいいよ、と言われた。
私としては、彼女が不当に押し込んだホテルをその目で見て欲しいだけだったのだが。
前回ロンドンに訪問したのは春頃だったが、その時と同様に空は高く感じられた。
10月30日のロンドンは快晴だった。
その時と同じ通りを進むので道に迷ったり、不安に思ったりすることはなかった。
駅の近く以外はさほど商店もないのだが、ホテルやドミトリーが建ち並んでいて不安を感じることはない。
2ブロックほど進んだところで、自然史博物館が見えてきた。
開館時間よりも少し早く着いたからか、敷地の外にまで行列が続いている。
私は生来の行列嫌いだ。
自然史博物館はパスしてビクトリア&アルバートへ行こうと思ったが、一応念のため、たぬさんに意向を確認した。
私「ここは混んでいるし展示も古臭いからビクトリア&アルバートへ行こうか」
たぬ「なにが展示してあるたぬ?その先の博物館(ビクトリア&アルバート)は?」
私「ここ(自然史博物館)はクジラの骨とかそういうもの、その先はデザインとか」
たぬ「じゃあ、自然史博物館を見るたぬ。」
私「すごい行列だよ?」
たぬ「並んでいたらそのうち進むし、なにかいいものをやっているかもしれない」
そんなやり取りで我々は自然史博物館の敷地からヒョロりと伸びた行列の後ろに並ぶことにした。