「炉心は撮影できないのね」という私のコメントに受付の人が素っ気ないのが気になったが下足場で靴を脱いで、作品の見学を始めた。
作品の中は回廊で、
中心はサウナだった、そのまま進むと水浸しの場所にでた。
あっさりと作品を通り抜けた様だ。
トイレに行きたくなったので下足場へ戻り、靴を履き、作品の外へ出て、用を足しに行こうと考えた。
作品の外に出ると、変にテンションが高いお兄さんが誰かと話しこんでいる。
私は、それよりも、トイレトイレ〜とスタスタ歩いた。
あらためて作品を外から見たら、原子炉、それもGEの沸騰水型に似ている。
沸騰水型といえば、福島第一だ。
「これ原子炉だよ」
とT氏H氏に話した。
尿意が込み上がってきたので、そのままトイレに向かった。
トイレは建屋の2階奥にあり、私は無事に用を足し終わった。
展示スペースへ戻るときに、作品を一望できた。
トイレへ向かう時も通った場所だったが、その時は気づかなかった。
明らかに福島の1号機だ。
それを木造で作っている。
T氏とH氏も展望エリアから作品を見下ろしていた。
やはり原子炉だ。
変なボイラーあたりでヘラヘラしているお兄さんが作者か?
「よかったら飲んでください」
と彼は正体不明の液体をダイソーのシールが剥がされずついている湯飲みで勧めてくる。
我々がドギマギしていると、
「いま、色々薬草を入れて、お湯を沸かしてサウナにしているんです〜」
と追加して説明してくれた。
その「お湯」は何の味も香りもしなかった。
「よかったらサウナ入ってください〜」
彼は勧めてきた。
一瞬、入ろうかと脱衣所まで行ったが思い留まった。
「あ、電車の時間があるんで〜」
と言って、後にすることにした。
作者さんですか、と聞くと、作品の説明をしてくれた。
「来年で10年じゃないっすか。で、なんか仕掛けたかったんすけど、暗いのはいやなんで、みんなこれに入って元気になればいいなと思って《元気炉》にしたんですよ〜」
何由来かはわからないが、作者は程々に高めのテンションで終始話しをしてくれた。
サウナ、気になるが、おっさん3人で備え付けの腰巻で入るのはなぁ、とよぎってしまった。
翌日にT氏が再訪しサウナに入った。
http://teppei101.com/art/takashi-kuribayashi-genkiro
帰りの新幹線でそのレポをチェックし、
よかったね、と同時に、チッ無理してでも入るのだった、という思いが去来した。
が、後の祭りだった。
そんな思いをするとはこの時にはつゆにも思わず、
私たちは、作者に礼を述べて、受付を通って退館した。
退館の時に受付の人に、
すごかったよ〜、本当に炉だったね、すごいよかったよ〜、ありがとうございました。
と伝えた。
彼女は氷の様に冷たい微笑を無言で私に返した。
それ以上、かけるべき言葉も思い浮かばなかったので、発電所美術館をでた。
(つづく、とは)