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イングランド・ルール(その1バベルの塔と産業道路)

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イングランド出発の前日は当時勤めていた会社の最終出社日だった。

朝、いつも通りに浜松町駅で電車を降りようとしていた。

私の背中でドスッと音がした。

後ろに立っていた女性が倒れたのだ。

「大丈夫ですか?」と聞くが返答は言葉にならない。

とりあえず浜松町駅で降りましょう、と声をかけ、近くにいた男性と二人で抱える形で電車から降ろした。近くにいた別の女性も付き添ってくれ、倒れた女性をホームの壁にもたれ掛けさせた。

ついてきてくれた女性にその場をお願いし、駅員を探すが見えるところにはいない。

ガードマンがいたので、急病人発生8号車付近へ駅員要請、と告げたところ、

「ドアが閉まりま〜す、駆け込まないでくださ〜い」と私に向かって言ってきたので、

ガードマンさん、ホームで異常発生、ついてきてください、と言ったらようやく事態を飲み込めた様で彼の持ち場を離れついてきてくれた。

倒れ込んだ女性を見て、状況を理解したガードマンは駅員を呼びに走っていった。

付き添いの女性は私に交代を求め、彼女もどこかへ走っていった。

倒れた女性は意識が戻ってきた様子で、大丈夫です大丈夫です、と繰り返していたが、顔面蒼白でとても大丈夫には見えない。

ガードマンが駅員を連れてくるのと同時くらいに付き添いの女性がペットボトルの水を持って戻ってきた。

駅員が、

「あとはこちらで対応します、ありがとうございました。」

と告げたのでその場を離れることにした。倒れた女性は財布から小銭を取り出して、水代を渡そうとしていたが、付き添いの女性は丁重に断っていた。

時間にして10分そこそこの話で、このまま会社に行けば朝礼には間に合うかどうかだった。

最終日に遅刻するのも悪い気がしたし、なんか挨拶とかあったら困るな、と勝手に想像し会社へ向かった。

なんとか会社にたどり着き執務室に入ると、朝礼は始まったばかりで異動や退職の挨拶をしていた。が、私の挨拶はとうとう最後までなかった。

まあ、ハプニング退職なので仕方ないと思った。

これまでなら、身の回りの物は次の職場へ段ボール箱で送るのだが、どうでもいいガラクタが増えてきたことと、今度の職場は引き出しがないデスクなので職場の荷物は自宅へ持って帰ることにした。

ランチは、私が採用し先に退職していた元秘書の人とエンジニアの人が有志で送別会を開いてくれた。その後、特にやることもなく、定時にまあまあな荷物で会社を上がり、自宅へ向かった。

帰りは特にトラブルはなかった、が帰宅すると問題が残っていた。

そう、荷物ができていない。

私は荷物を作るのが大の苦手だ。

手帳には持ち物リストを記載してあり、それを毎回コピーして消し込んでいく。

なんとか詰め込めば45リッターのキャリーケースにも収まるのだが、現地でワインなどを買い込むことを想定し74リッターのaceカバンにした。

日付が変わった頃、荷造りが完了した。

そこで床に入り、色々あった一日を振り返る暇もなく眠りについた。

途中、飛行機に乗り遅れる夢をみて1度は起き、浅い眠りのまま、セットしていた目覚ましよりも少し前に起きた。

なにか暖かいものを飲みつつアプリ”ジャパンタクシー“で「いつもの場所」に羽田空港国際線ターミナル行きのタクシーを呼んだ。

いつもなら5分も待てば流しが捕まる通りなのだが、朝6時前後はタクシーが少ないのか配車でも10分以上待つことになる。

この日も15分ほどかかって車が到着した。

6時前、タクシーに乗り込むといつも通り、

「青椒さま、日本交通の〇〇です、ご乗車ありがとうございます。はい、羽田空港国際線ターミナルですね、ご希望のルートはございますか?」

〇〇通りから産業道路へ入って、あとはお任せします。ラジオ、かかるならNHKをお願いします。

と告げ、車は私と同行者を乗せて走り出した。

平和島の立体交差を大森警察に向かって左に折れたら産業道路に合流だ。

この産業道路だが、もう10年は工事していると思う。

信号が多い上に工事箇所を迂回路、仮舗装や鉄板の蓋の路面で私たちのジャパンタクシーがガタガタと薄い剛性感で心細く揺れる。

これが、コンフォートならフワフワといなすところだが、このジャパンタクシーはガタガタと立て付け悪く揺れる。

(そういえば、配車アプリの名前もジャパンタクシーだった。この辺の商標関係ってどうなっているのだろうか)

いつまでも工事が終わらない産業道路が2車線から3車線になり少し走ったところで、あの看板が見えた。

「WATAMI」、この看板が見える大鳥居の交差点で1、2回の信号待ちが発生する。

この信号待ちの時に、あーこれから海外へ出かけるんだ、と言う気持ちが湧いてくる。

ここまではなんとなく、スケジュールをこなす「作業」なのだが、この交差点でこの作業が「旅行」に切り替わる気がいつもする。

産業道路から大鳥居の交差点を左折したのは6時のニュースが終わった後だった。

さあ、いよいよ羽田空港だ。