レストランなど食事処で食事をしていると、
「いつもありがとうございます」
「先日はありがとうございました」
などと、女将や支配人、主人とおぼしき人から挨拶を受けるお客がいる。
お客の方も、まんざらではなさそうに
「あ、どうも」
「いえいえ、こちらこそ」
などと応じている光景をたまに見かける。
あれは、長い年月の間に相当通い尽くしている上得意様なのだろう。
航空会社のマイレージプログラムなら厳格なルール(ただし毎年改正(改悪)がある)が決められており、ある一定の基準を満たせば、ラウンジにアクセスでき、優先搭乗などの特典のほか、
チーフ乗務員(女将)から
「いつもご搭乗ありがとうございます」
「またご一緒できて光栄です」
などの挨拶とともに、時によってはミネラルウォーターやアイスクリームを持参し参上する。
仮にエコノミークラスの一番安い料金で搭乗していても、有形無形にチヤホヤしてくれる訳だ。
もちろん、これも金と時間がかかる。そして、厳格なルールに基づいている。
私も羽振りが良かった頃には1、2軒だけそういう店を持ったことがある。
週3回は通っただろうか。
やはり、金と時間を相当遣った。
羽振りが良くない最近はそのような店を持つこともできず、侘しく暮らしている・・・訳ではない。
気に入りの店ではそれなりにチヤホヤされている。
それは、どうしてか??
約10年の年月をかけ、私独自の速成ロイヤリティプログラムを開発したのだ。
以下がその7か条だ。
速成ロイヤリティ7か条
1、来店中は常に笑顔
2、どんな些細なことでも気がついたら褒める
3、オーダーなどで「すみませーん」と言わない
4、常に敬語を使い、対等を心がける
5、口コミサイト(なるべく海外向け)に(事実の範囲で)好意的な口コミを書く(なるべく英語で)
6、訪問後なるべく1ヶ月以内にお礼状を書く
7、二回目以降は予約して
もちろん、この7つをやってもロイヤリティを獲得できるわけではないが、私は高確率で店のロイヤル顧客になっている(と信じている)。
それぞれの項目を説明する。
1、来店中は常に笑顔
まずは第一印象が大切。悪い印象を与えない。
2、どんな些細なことでも気がついたら褒める
良い店ほど細部にこだわりを持っているもの、気がついたら敬意を表し、そのこだわりに同意する。
3、オーダーなどで「すみませーん」と言わない
この、すみませんだが、接客業では必ずしも丁寧なお願いとして伝わっているわけではない。
接客スタッフによっては、反感に近い感情を持っていたりする。
すみません、と言っていたのでは店の好印象を得られない訳だ。
「お願いします」や「よろしいですか」などに言い換える、というのを心がける。
4、常に敬語を使い、対等を心がける
時々だが、「ビール」「刺身」などだけで、ですますがなく注文している人を見かける。
これは大前提だが、ホールスタッフや従業員はサービスの提供者ではあるが、お客の召使いではない。
料理を運ぶ、注文を聞く、などはお客にサービスを提供するためなのだ。
上げ膳据え膳だと何でも召使いかお手伝いさんという感覚はいただけない。
5、口コミサイト(なるべく海外向け)に(事実の範囲で)好意的な口コミを書く(なるべく英語で)
そのお店がクレジットカード利用可能なら、という前提になるが、トリップアドバイザーなど海外の口コミサイトへ好意的な口コミを載せて欲しい。
食べログなど日本の口コミサイトに掲載するのもありなのだが、人口減少、産業縮小の昨今で日本国内だけでの新規顧客開拓はなかなか難しい。
やはり、ここはインバウンド需要を取り込んで売り上げを確保いただき、末長くお店を続けてもらうためにも、海外への情報発信をしてほしい。
効果がすぐに表れることは少ないが、贔屓の店に新しいお客さんがちらほら増えるのはなんだか嬉しい。
6、訪問後なるべく1ヶ月以内にお礼状を書く
頻繁に訪問できれば、顔も名前も憶えてもらえるが年に数回のレベルで常連面はみっともない。
かと言って、お店は応援したい。
便箋に何枚も書く必要はない、官製はがきの裏一面びっしりでなくても良い、
絵葉書の片隅にちょこっと嬉しかったこと、ありがたかったこと、お礼を書けば良い。
具体的に褒められたスタッフは喜ぶし、礼状をもらって怒る店はまずないはずだ。
7、二回目以降は予約して
ここが重要。
前記のとおり、名前(住所含む)を店には伝えてあるので、次回来店時は「〇〇と申します」と予約を入れよう。
その際に、この間送ったお礼状読んでもらえましたか?
なんて野暮なことは言わなくて良い。
上記、速成ロイヤリティプログラムを実行すれば、高確率で次回以降、顔と名前が一致し色々メニューにない一皿や、暖かいサービスを受けられるだろう。
訪問時は悪い印象さえ残さなければ良い、印象を残すために目立とうとする必要はない。
店で提供を受ける料理や飲み物の味をさらに良くするため、店の良い雰囲気作りを店の人と共同で行っていると考えれば良い。
礼状も華美、達筆である必要はないし、訪問全店に送る必要もない。
本当に良いサービスを受けた時、いつになるかわからないけど、また訪問したいと思った時だけで良い。
そんな気持ちのこもった礼状を送ると、稀だが
返礼がもらえたり、その返礼にお得な情報が入っていたりする。
こうなるとしめたものだが、返礼がないからと言って怒ったりしてはいけない。
こちらから一方的に想いを伝えているだけだから。
もし、お店側も悪い印象を持っていなければ、
(予約の上)次回訪問時、
「ひょっとして前回お礼状をいただいた〇〇さんですか」
と聞かれる。
サービスが進む中で、少しずつ会話が生まれ各々が感じるその店の良さを確認しあえればそれで、速成ロイヤリティ顧客だ。
ま、常連(通い倒す)でも得意客(多額の利用)もないので、ロイヤリティ顧客(忠誠、尊敬)あたりが適当な気がする。
それでも、自分自身を憶えてもらい、気にかけてもらいながら提供される料理、酒の味は、格別なものだと思う。
ここまでが気に入りの店からロイヤリティを獲得する私のノウハウだ。
飲食店の栄枯盛衰は本当に早い、次回訪問時にはその店がなくなっていたり、パトロールを怠っている間にサービスやメニューがガラリと変わっていたり、自分が気に入った店がそういう憂き目に遭うのは悲しい。
ロイヤリティを獲得するというのは、エコノミーにチヤホヤを得るわけではなく、
その店に、あなた方は間違っていない、応援しているよがんばれ、などの気持ちを伝え、讃えることだと私は考えている。
これは、あくまでも私のやり方だし、これ以外に上級編と言えるプログラムもある。
何も考えずにこの通りにやれば、うまくいくかもしれないが、重要なのは、その店、サービスへの敬意と感謝を伝えることで、チヤホヤはそのオマケだと考えた方が良い。
限られたチャンスに、気に入りの店でいつも気持ちの良いサービスを受けられれば、それだけ幸せな時間を持てるのだから。